それでは、事業協同組合の定款の作り方の続きを解説します。
やり方は前回と同じで、ダウンロードした定款のひな型を下記の解説を見ながら加筆修正してください。
ダウンロード
内容は定款25条以降になります。
こんな方におすすめ
- 協同組合を設立しようとしている人
- 協同組合の定款を作ろうとしている人
- 定款に記載する条文や文面に悩んでいる人
- 自作した定款の不備を確認したい人
Contents
役員の定数等
第25条 役員の定数は、次のとおりとする。
(1)理事 ○人以上○人以内
(2)監事 ○人以上○人以内
2 第8条第2項各号の一に該当する者は、役員となることができない。
中小企業等協同組合法(以下、中協法)では、理事は3人以上、監事は1人以上とする旨が記載されおりますので、これを下まわらない定数とする必要があります。
そして、定款における役員定数の記載方法は3つあります。
定数に幅を持たせない
理事 〇人 監事 〇人
定数の幅が1人以内
理事 7人又は8人 監事 1人又は2人
定数の幅が2人以上
理事 20人以上23人以内 監事 3人以上5人以内
もちろん、この3つの記載方法を混ぜても大丈夫です。
理事 10人以上12人以下 監事 1人または2人
注意して欲しいのが、〇人以上や〇人以下と定数の幅を片方だけにしてしまうことです。法的に違反ではないと思いますが、過去に実例が無いと、行政庁で認可するのか微妙な気がします。
役員の任期
第26条 役員の任期は、次のとおりとする。
(1)理事 ○年又は任期中の第○回目の通常総会の終結時までのいずれか短い期間。ただし、就任後第○回目の通常総会が○年を過ぎて開催される場合にはその総会の終結時まで任期を伸長する。
(2)監事 △年又は任期中の第△回目の通常総会の終結時までのいずれか短い期間。ただし、就任後第△回目の通常総会が△年を過ぎて開催される場合にはその総会の終結時まで任期を伸長する。
2 補欠(定数の増加に伴う場合の補充を含む。)のため選出された役員の任期は、現任者の残任期間とする。
3 理事又は監事の全員が任期満了前に退任した場合において、新たに選出された役員の任期は、第1項に規定する任期とする。
4 任期の満了又は辞任によって退任した役員は、その退任により、前条に定めた理事又は監事の定数の下限の員数を欠くこととなった場合には、新たに選出された役員が就任するまでなお役員としての職務を行う。
役員の任期は中協法の中で、理事は2年以内、監事は4年以内とされております。一般的には、2年に統一しているところが多いようです。また、第4項の下線部は、役員の定数に幅を持たせていない場合は削除してください。
員外理事
第27条 理事のうち、組合員又は組合員たる法人の役員でない者は、○人を超えることができない。
組合には員外理事を設置することが認められています。員外理事を設置する場合はこの条文を記載します。中協法の中では理事の2/3は組合員又は組合員たる法人の役員である必要が記載されておりますので、1/3は組合員外からも理事を選任できます。理事が6人でれば2人は員外でもOKです。ただし、理事の定数に幅にある場合は、その下限を基準に設定してください。
監事については組合員でも員外でも問題ありません。運営上は員外の方が良いとされております。
なお、理事については組合員以外を認めたくないとした場合、この条文を次のように変更してください。
役員の要件
第27条 本組合の役員は、組合員又は組合員たる法人の役員でなければならない。
これで、員外の役員を選ぶことはできない仕様になります。
理事長、副理事長及び専務理事の選定
第28条 理事のうち1人を理事長、〇人を副理事長、〇人を専務理事とし、理事会において選定する。
ここは、理事長以外の役職理事を設けるか、設けた場合、何人選ぶかをルールとして組合の定款に明記します。 法務局に登記する事項は理事長(代表理事)だけですので、副理事長や専務理事、常任理事などは組合で自由に設置を決めてOKです。理事長以外の役職理事が不要であれば、次のとおり修正して下さい。
理事長の選定
第28条 理事のうち1人を理事長とし、理事会において選定する。
組合が大きくなければこれで充分だと思います。副理事長を3人、専務理事を1人などと明記した場合、必ず選定しなければいけないという義務が生じます。副理事長の席を定款上3つ用意していて、現状が2人しかいないとれば、定款違反状態という組合になります。また、副理事長は3人以内という定款にすることについては、所管行政庁の判断になります。
いずれにしても、総会は理事を監事を選ぶだけ。理事長(代表理事)や副理事長、専務理事などは理事会で選任するフローとなります。総会の中で理事長(代表理事)や副理事長を選ぶという方法は法律でも認められておりませんので注意してください。
中小企業等協同組合法 (代表理事) 第三十六条の八 理事会は、理事の中から組合を代表する理事(以下「代表理事」という。)を選定しなければならない。 2 代表理事は、組合の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。 3 前項の権限に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。 4 代表理事は、定款又は総会の決議によつて禁止されていないときに限り、特定の行為の代理を他人に委任することができる。 5 代表理事については、第三十六条の二、一般社団法人及び一般財団人に関する法律第七十八条及び会社法第三百五十四条の規定を準用する。
役員の選挙
第32条 役員は、総会において選挙する。
2 役員の選挙は、○○式無記名投票によって行う。
3 有効投票の多数を得た者を当選人とする。ただし、得票数が同じであるときは、くじで当選人を定める。また、当選人が辞退したときは、次点者をもって当選人とする。
4 第2項の規定にかかわらず、役員の選挙は、出席者全員の同意があるときは、指名推選の方法によって行うことができる。
5 指名推選の方法により役員の選挙を行う場合における被指名人の選定は、その総会において選任された選考委員が行う。
6 選考委員が被指名人を決定したときは、その被指名人をもって当選人とするかどうかを総会にはかり、出席者の全員の同意があった者をもって当選人とする。
ここは役員の選出方法を明記します。基本的に役員は選挙により選出することが原則です。その選挙の際の投票方法について連記式無記名投票か単記式無記名投票を選択して下さい。
連記式無記名投票
連記式無記名投票とは理事を5人選ぶ場合、1枚の投票用紙に5人の名前を記載し、その名前の数を集計する方法で、組合数が少ない組合で有効です。定数分の名前が記載された投票となりますので、1回の投票で役員候補が選出できますし、組合員が少ない分集計の負担が少ないのです。
単記式無記名投票
単記式無記名投票とは理事を5人選ぶ場合、1枚の投票用紙に1人の名前を記載し、その名前の数を集計する方法で、組合数が多い組合で有効です。組合員が多いと投票数の多くなりますので、その分、役員候補者も分散されて投票されます。そのため、役員定数に満たない人数分の名前しか投票されないという状況にはなりにくいですし、集計も1票に1名しか記入できませんので、投票者が多くても集計は簡単になります。
総会の招集
第38条 総会は、通常総会及び臨時総会とする。
2 通常総会は毎事業年度終了後○月以内に、臨時総会は必要があるときはいつでも、理事会の議決を経て、理事長が招集する。
ここは総会の招集について記載する条文です。通常総会の開催する時期を、事業年度終了後2ヶ月以内とするか3ヶ月以内とするかを選択して下さい。
いずれでも良いのですが、3ヶ月とした場合は、最寄りの税務署に届け出を行って、納税する期間の確認を行って下さい。県税、市税も同じです。通常総会は事業年度終了後3ヶ月以内でもいいよといっているのは中小企業等協同組合法の管轄内だけものです。税法には税法の解釈があるので注意してください。
書面又は代理人による議決権又は選挙権の行使
第41条 組合員は、第39条第1項の規定によりあらかじめ通知のあった事項につき、書面又は代理人をもって議決権又は選挙権を行使することができる。この場合は、その組合員の親族若しくは常時使用する使用人又は他の組合員でなければ代理人となることができない。
2 代理人が代理することができる組合員の数は、○人以内とする。
3 組合員は、第1項の規定による書面をもってする議決権の行使に代えて、議決権を電磁的方法により行うことができる。
4 代理人は、代理権を証する書面を本組合に提出しなければならない。この場合において、電磁的方法により議決権を行うときは、書面の提出に代えて、代理権を電磁的方法により証明することができる。
ここは総会における書面や代理人による決議について記載している条文です。特に第2項の代理人が代理できる人数を決める必要があるのですが、中協法では「5人以上を代理できない」としてますので、定款では最高でも4人以内となります。 組合員数のにもよりますが、概ね1人以内でよいと思います。しかし、この人数が少ないと組合数は多いのに実際に総会に出席する頭数が少ないなどの状況となった場合、総会が不成立となる可能性も出てきますので注意してください。
総会の議決事項
第45条 総会においては、法又はこの定款で定めるもののほか、次の事項を議決する。
(1)借入金残高の最高限度
(2)1組合員に対する貸付け(手形の割引を含む。)又は1組合員のためにする債務保証の残高の最高限度
(3)組合員の○○事業に関する債務保証の残高の最高限度
(4)1組合員のためにする組合員の○○事業に関する債務保証の残高の最高限度
(5)その他理事会において必要と認める事項
ここは、総会で審議する議案の内、中協法やこの定款の他の条文に関するもの以外で必要なことを記載します。 もう少しかみ砕いて言うと、この条文で定めた内容については、総会で審議するというルールを明確にします。ですので、理事会や事務局で勝手に決めて進めるべきではないことを記載しましょう。定款のひな型にもお金の貸し借りに関する例が多いは、組合運営の重要なことは、総会で決めましょうという意思の表れです。
ちなみに、中協法の総会の議決事項は次のとおり定められています。
(総会の決議事項)
第51条 次の事項は、総会の議決を経なければならない。
1 定款の変更
2 規約及び共済規程又は火災共済規程の設定、変更又は廃止
3 毎事業年度の収支予算及び事業計画の設定又は変更
4 組合の子会社の株式又は持分の全部又は一部の譲渡
5 経費の賦課及び徴収の方法
6 その他定款で定める事項
つまり、「6 その他定款で定める事項」について、中協法では定められていないけど、組合運営の中で重要なことは、みんなで決めるべき事なので、定款の(総会の決議事項)に記載しましょうということです。
事業年度
第53条 本組合の事業年度は、毎年○月○日に始まり、翌年△月△日に終わるものとする。
ここは、組合の事業年度を記載します。パターンとしては2つですので選択してください
毎年1月1日に始まり、同年12月31日に終わるものとする
毎年〇月〇日に始まり、翌年〇月〇日に終わるものとする
附 則
1 設立当時の役員の任期は、第26条第1項の規定にかかわらず、最初の通常総会の終結時までとする。
2 最初の事業年度は、第53条の規定にかかわらず、本組合の成立の日から△年△月△日までとする。
ここは定款の一番最後に記載する附則です。中協法では設立総会選任された役員の任期は、最初の通常総会までとしています。つまり、事業年度を4月~3月に設定し組合設立が2月だった場合、最初の事業年度は2月~3月であり、4月又は5月に開催する通常総会で設立時に選んだ役人の任期は終了することになります。
定款のひな型の中で、条文を削除したり、追加しているばあい、赤字の第26条と第53条の条番号がずれることが想定されます。(役員の任期)と(事業年度)の条文番号を確認して適宜修正してください。
【まとめ】
以上が定款の書き方に関する説明になります。
どうでしたでしょうか。
内容の8割はひな型を参考としてコピペして、あとは内容のごく一部を選択するか数字を決める程度だったと思います。文書に起こすと大量になりますが、定款のひな型でいじるところはごく一部なのです。
これで定款はOKです。
お疲れ様でした。