今回は、協同組合設立で必須事項の発起人会の開催について説明します。
発起人は、設立する組合の様々な土台となる物事や必要書類等を、その先頭に立って素案を考える人です。
事業協同組合の発起人は4人以上というルールがあります。そのため、代表の発起人1人が各種申請書類の作成をして、他の発起人はその内容について文句は言いませんという了解があったとしても、形式的には発起人会を開催し、組合設立に関する事業計画や収支予算、組合定款などは、発起人会として承認したものであるとする必要があります。
また、中小企業等協同組合法(以下、中協法)には、次のとおり記載されております。
(創立総会)
第二十七条 発起人は、定款を作成し、これを会議の日時及び場所とともに公告して、創立 総会を開かなければならない。
2 前項の公告は、会議開催日の少くとも二週間前までにしなければならない。
つまり、発起人は定款の作成と創立総会の会議日の2週間前までの公告をすることが義務づけられていますので、発起人会は創立総会の2週間以上前に開催しなければいけないので注意してください。
また、組合を4名で設立しようとする場合、発起人も組合員も、同じメンバーとなることがほとんどなのですが、そうすると、発起人会も創立総会も同じ人物が出席となるので、どちらかを省略、又は合体して開催してもいいように思えるのですが、法令に従うと2週間の公告の無い創立総会は認められませんので、形式上は別々に開催する必要がありますので注意してください。
そして、組合の設立認可申請書に必要な書類は設立総会の議事録であり、その前段で開催する発起人会の議事録は求められておりません。
しかし、法令に則って進めたことを証明するためにも、発起人会の開催案内と議事録は作成して保管していた方が良いと思います。
こんな方におすすめ
- 協同組合の設立を考えている人
- 協同組合設立で発起人となった人
- 協同組合設立に関する書類の素案ができた人
- 協同組合の設立に向けて発起人会を開催したい人
Contents
発起人会の開催案内
設立総会直前の発起人会は主に次の内容を審議し検討します。
(1)創立総会提出議案について(設立趣意書、定款、事業計画、収支予算など)
(2)設立総会の開催日時とその場所
以上の内容を審議する旨を記載した発起人会の開催の案内を発起人に送付します。単なる案内状ですので形式は自由なのですが、それが一番困る原因となりますので、参考までに発起人会の開催案内のひな型を紹介します。ダウンロードして活用下さい。
ダウンロード
発起人会の考え方
発起人会は、協同組合を設立しようとする4人以上の発起人が組織する会のことを指しますが、大方、この発起人会の会則や運用規程は無いまま展開されます。そのため、発起人会は発起人の過半数の出席で成立するとか、議案は出席した発起人の過半数の賛成で可決するとか、誰が議長となるかなど何も決められてないことがほとんどです
つまり意思決定は自由裁量ということです。
しかし、自由であるがために、発起人会では全員が承認するという事実が重要になります。発起人全員が集まれる日を選んで会議をする。議案については賛成反対を問うのでは無く、全員が賛成するもの検討して作り込むということです。
発起人総会の進め方
発起人会の進め方は一般的な会議と同じで問題ないです。代表発起人または発起人のだれでいいので、適当に挨拶して、そのまま進行してもらってOKです。もちろん、審議する内容の設立趣意書や定款・事業規約、事業計画、収支予算書は作成した人に説明を振って「どうでしょうか、みなさん、加筆・修正はありますか?」で問題ありません。大切なことは発起人会として設立総会に提出する議案と各種案をつくりあげることです。
そして、設立趣意書や定款・事業規約、事業計画、収支予算書のほか、下記の内容も創立総会では議案として図るので、その素案についても作成し、発起人会で検討しましょう。
(1)賦課金の額及び徴収方法決定の件
収支予算書の収入の項目を確認して設定してくだい
(2)初年度役員報酬の額決定の件
役員報酬の金額は自由です。無報酬でもOKですが、支払う場合は「年額***円以 内」と上限を決めて、その範囲内とするほうが機能的です。
また、役員の報酬は、必ず理事と監事を分けて記載してください。定款の参考例を活用 するとそのような仕様になっております。
(3)組合の負担に帰すべき創立費の額及びその償却方法決定の件
10,000円や5,000円と少額であっても設立に掛かった費用を創立費として組合の負担させた方がいいと思います。その際は、収支予算書にも計上し、創立総会で皆さんの了解を得ましょう。
(4)初年度借入金残高の最高限度額決定の件
運転資金等を借り入れることを想定している場合には、組合としてどの程度まで借りるのかを皆さんの総意で決定しておきましょう。
(5)取引金融機関の決定の件
この項目については、どこでもいいとは思いますが、一応確認のために全員の総意の中で決めましょう。組合員によってはメインバンクが違うことが多いので、組合の出資金を預け入れたり、事業の取引で活用する銀行については予め総会に諮っておきましょう。
(6)組合成立当初の役員の任期決定の件
ここも、定款に記載している事項なので確認程度ですが、初年度の任期は1年以内で、次の通常総会で再度改選となることを周知しておきましょう。
(7)関係団体加入の件
ここは加入団体があれば記入しましょう。事業協同組合を設立する際は「〇〇県中小企業団体中央会」という組織にすでに相談しているかもしれませんが、そのような団体に加入する意思があるとすれば、会費も発生することですから、その加入の有無も、しっかりと組合の総意を示しましょう。
協同組合という法人組織は所管行政庁から認可を受けて設立するため、毎年度事業報告書や決算資料を所管行政庁に提出する義務があるほか、役員の任期も理事は2年毎に満了となり、都度代表理事を登記する必要があります。
意外と面倒くさい事務手続きなどもありますので、組合の事務局がある都道府県中小企業団体中央会に加入し、すぐ相談できるようにすることをお勧めします。
(8)創立総会の開催日時・場所について
この創立総会開催日時と場所の設定も忘れずに議案として提出しておきましょう。
(9)その他
そのほか、検討事項があれば、その意見も拾えるようにしておきましょう。
上記の議案については参考様式としてこちらからダウンロードできます。
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創立総会の公告方法
発起人会が終わり、定款が承認され、創立総会の開催日時と場所が確定したら、忘れずに、そして、すぐに「公告」をしましょう。この公告を創立総会開催の2週間前までに実施することが必須要件ですので注意してください。
なお、公告の方法は、一般的に、発起人代表の事業所や自宅、そして設立する組合の事務所に組合定款と併せて掲載する方法がとられているようです。下記のような文書を作成し、入り口付近の加入の意思のあるものがいつでも確認できるような場所に掲示してください。
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まとめ
発起人会は組合が設立するまでの準備や組合の方針及び方向性を決める重要な位置づけにある会です。
多くの場合、相互に信頼できる企業の代表者が集まって組合設立の話となり、発起人や発起人会が構成されますので、改めて仰々しく発起人会を開催しなくとも、内容を相互理解を前提に、なぁなぁで進めても問題無いように思えます。
しかし、協同組合という組織は所管行政庁から認可を受けて設立するという公益的観点から鑑みても、やるべきことはしっかり実施し、記録を残していくことが大切になります。