ここでは、事業協同組合の設立に関する収支予算書の作り方を解説します。
設立の認可を受けるための収支予算書の重要なポイントは、必ず当期純利益が計上される収支予算書になるよう調整することです。
【調整方法】
<収益を増やす>
(1)共同事業の利用数又は手数料単価を上げて事業収益を増やす。
(2)賦課金を計上して収益を増やす。
<費用を押さえる>
(1)雇用をあきらめ、組合事務処理は組合員企業に委託
(2)家賃をカットし、組合員企業に併設し、(1)の委託に含める
※水道光熱費や事務費についても委託してしまう。
(3)その他経費についても見直してみる。
以上の様な調整をしながら、必ず当期純利益が計上されている収支予算書を作り込んでいきます。
以前にも説明しましたが、協同組合のお客様は組合員です。つまり、組合の収益はのほとんどは組合員からいただくスキームとなります。
そのため、事業協同組合の設立における収支予算においては、組合の収入(組合員に掛ける負担)と費用(組合の支出)のバランスが重要であり、設立総会においては、賛同しようとする組合員が納得する収支予算を計上し説明しなければいけません。
また、事業報告書同様、収支予算書も2期分作成する必要があるほか、1期目の期間が短い場合は3期分が求められる可能性もあります。そして、どちら場合も当期純利益が計上されるような計画が求められます。
それでは早速、作ってみましょう。
こんな方におすすめ
- 協同組合の設立を考えている人
- 協同組合の収支予算を作りたい人
- 協同組合の収支予算のひな型が欲しい人
準備するもの
収支予算書を作るのに際し、次のものを準備して下さい。
1.収支予算書(ひな型)を下記からダウンロードしてください。
ダウンロード
2.作成した事業計画書を準備してください。
3.組合は運営上最低でも年1回の通常総会とその開催を企画する理事会を開催することが決められています。
そのため下記のことを決めて、収支予算書に計上しましょう。
・総会(通常)はどこで開催しますか?(場所代がかかる場合は会場料を計上しましょう)
・理事会は年何回程度やりますか?(理事会の回数を想定し、会場料や会議費を計上しましょう)
・理事会はどこで開催しますか?(理事会の場所を想定し、会場料を計上しましょう)
・役員に旅費を支払いますか?(役員に旅費を支出する際は、その経費も計上しましょう)
その他、人を雇う場合は人件費、独立した事務所を借りるのであれば家賃、水道光熱費、事務費等の必要とされる費用項目を洗い出しましょう。発起人の企業を参考にすると出しやすいです。
Contents
収入を入力する
事業の手数料高
はじめに、ダウンロードした収支予算書の収入項目を入力しましょう。
難しいことはありません。作成した事業計画書の実施事業名とその手数料高の合計金額を入力するだけです。
このサイトで用意した事業計画書のひな型の各種事業の手数料高の合計にアルファベット「A」「B」・・・等が記載されています。そこに記入された金額をそのまま、収支予算書の「A」「B」・・・のセルに転記するだけです。
注意することは、すべての実施事業に組合の収入となる手数料高があるわけではありません。例えば、共同宣伝事業などは、賦課金の中で支出したりすることが多いので費用計上のみという場合もあります。
賦課金
賦課金は組合員から徴収する年会費のようなものです。組合の運営で必要な経費を組合員に課すための科目です。
組合の運営は、組合員から事業利用の手数料をもらって運営しますが、組合員という限られた範囲での事業であることから、手数料収入だけでは組合の運営は困難となることもあります。そのため、組合員に組合の運営経費のいくらかを賦課します。
以上のことから、この賦課金については支出経費を算出した最後に計算しましょう。
事業外収入
事業外収入は、記載例のとおり賛助会員の会費や雑収入を記載します。設立段階においては賛助会員枠を設置(定款に記載)するのであればその会費を計上してください。雑収入は預金利息やその他の収入を含めての記載なので、ザックリと1,000円程度でOKです。
支出を入力する
事業の支出
事業計画書を参考に各種事業の支出について入力しましょう。
概ね、共同宣伝事業や教育情報提供事業など、手数料収入(手数料高)を見込んでいない事業が該当となりますので、それほど多くはありません。
このサイトで用意した事業計画書のひな型の共同宣伝事業と教育情報提供事業の合計にアルファベット「D」「E」・・・等が記載されています。そこに記入された金額をそのまま、収支予算書の「D」「E」・・・のセルに転記するだけです。
一般管理費の計上
事業の支出を記載したら、次は一般管理費を考えていきます。
なお、支出がゼロ円の科目については削除し、その他必要な科目があったら追記してください。
①人件費
役員報酬や職員に組合から給与を支払う見込の場合はここを埋めます。
組合で人を雇って給与を支払うという当たり前のスキームなのですが、いまは組合がその業務を組合員企業に委託していることも多く、人件費を計上してない場合もあります。
なお、組合員企業が組合業務を受託して運営する場合、人件費はゼロ計上で問題ありません。
この人件費や役員報酬の有無が設立認可申請で問題にとわれることは無いと思いますが、組合員企業に委託する場合は、それが分かるように事務委託費等を計上し、月額〇円で年額〇円としっかり明記しましょう。
②業務費
ここは組合が運営するに際し、必要となる経費を計上していきます。
組合がどのような運営になるかを想像しながら必要経費を計上してみ下さい。それでもイメージしにくい場合は、発起人の事業所の事務経費を参考にはじき出してみてください。先にも記述したとおり、最低でも日々の経費と総会や理事会が実施される予算が計上されていればそれほど問題ではありません。
事務所を単独で構える、または組合員企業に委託する、このいずれかで、組合の支出も大きく違いますが、気にすることではありません。
③事業外費用
ここは事業外費用となっておりますが、主に設立準備にかかった費用を計上します。一般的には開業費や創立費が該当します。組合で大きな建物等を立てるなどの大掛かりな事業計画であば、様々な創業に関する準備が必要となるため、発起人などの個人負担にしない方が良いとは思いますが、なるべく経費を掛けないで組合を設立したいとする場合は、あっても設立総会や発起人会の会議にかかった経費や組合の登記用の印鑑作成ぐらいだと思います。もちろん、それほどの額ではないので発起人の自己負担でとなれば、無しでも問題ありません。
まとめ
事業計画案も収支予算書も、組合員と所管行政庁に対し組合事業とその活動力を納得させるための書類と考えれば、非常にハードルが高くなり躊躇します。
しかし、計画と実績がかけ離れてしまうのは世の常であると開き直って、サックサクと進めましょう。
組合は原則、組合員となる企業に必要であると望まれて設立します。そのため組合がやろうとする事業には協力的です。所管行政庁に関しては、あまりの絵空事のような収支予算でも無い限り文句は言えません。理由は組合のお客様は組合員企業で、その組合員企業が総会で承認した事業計画と収支予算書だからです。
自分たちでこれぐらい組合事業を利用すると決めた内容ですので、所管行政庁はがんばってくださいとしか言えないということです。
ですので、あまり細かいことにこだわらず、サクサク進めましょう。