事業協組合

中小企業組合士が教える事業協同組合の活用方法

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 こんにちは。 

 突然ですが、中小企業組合士という超マイナーな資格があるのはご存じでしょうか。これは、1974年から中小企業庁の後援を得て実施されている試験資格制度で、中小企業組合(事業同組合、企業組合、商工組合等)で働く役職員の資質向上を目的に実施されております。毎年、12月上旬に試験が実施されますが、資格取得には3年の実務経験も必要するものです。

 この資格の有無で、法律的にできない業務が生じるわけではないので、むしろ不要な資格かもしれませんが、全国に約3,000人の登録者がいて活躍しております。

 そんな組合組織の運営のプロである中小企業組合士が事業協同組合の活用方法をいくつか紹介してみたいと思います。

こんな方におすすめ

  • 協同組合が何なのか分からない
  • 協同組合ってどんなメリットがあるのかを知りたい
  • 現在の協同組合組織を立て直したい!
  • 協同組合の特徴を知りたい

ココがポイント

事業協同組合の有効性は次の4つ

1.県知事認可の法人

2.信頼瀬が高い

3.価格競争を防止できる

4.官公需の受注が期待できる

5.要望・陳情が効果が高くなる

Contents

【信頼の向上】

 事業協同組合は県知事が認めた組織

 株式会社や合同会社、有限会社はよく目にする会社(法人)ですが、これらは法務局に登記すれば設立が認められます。

 事業協同組合も同様に登記が完了するれば設立となりますが、その登記には県知事等(所管行政庁)からの認可書が必要になります。そのため、事業協同組合は県知事等(所管行政庁)が設立を認めた法人であるということになり、第三者からの信頼が得やすい法人であります。 

事業協同組合や企業組合など知事から認可を受けて設立する法人は、そのパンフレットに「県知事認可の法人です」とビシッと記載しているところも多数あります。

言っていいのかは微妙ですが、一般的な企業の信頼は活動実績から構築するものですが、組合法人の場合は設立段階で「知事認可」という印籠をもってのスタートになるのは、このご時世ですので非常に有効であると思います。

 金融機関からの信頼も厚い

 事業協同組合という法人の設立は、4人以上の事業者が集まらないと設立ができないという特徴があります。

 つまり、事業協同組合は4人の事業者が支えとなっていることから、仮にその内の1人が経営不振で倒産しても組合は3人で支えれば維持できます。そのため事業協同組合を経由した資金調達は、融通が利きやすいというメリットがあることから、全国には組合が金融機関から資金を借入れ、組合員向けに転貸貸し付けを実施している組合は多数あります。

 また、独立行政法人中小企業基盤整備機構では事業協同組合等の団体組織向けに「高度化事業」を展開しており、商工業団地整備や、ショッピングモール、商店街区整備などを支援しており、数多くの実績を残しております。皆さんがよく行く近所のあの店も、もしかしたら事業協同組合が「高度化資金」の受け皿となって建てたものかもしれません。

 ただし、転貸融資先の組合員が倒産となり、その借入資金ができなくなった場合、組合と金融機関との融資契約にもよりますが、組合が倒産した事業者の債務を負担することになります。つまり、他の組合員が負担することとなり、組合は疑心暗鬼の中での運営となりますのでご注意ください。

【独占禁止法の適用を除外】

 価格競争に強くなるかも?

 実はあまり知られていないことかもしれませんが、独占禁止法第22条により事業協同組合は原則その適用を除外されています。しかしこれだけでは、何を言っているのかわからないと思いますので、簡単に独占禁止法を説明します。

<私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律>

(一定の組合の行為)

第二十二条

この法律の規定は、次の各号に掲げる要件を備え、かつ、法律の規定に基づいて設立された組合(組合の連合会を含む。)の行為には、これを適用しない。ただし、不公正な取引方法を用いる場合又は一定の取引分野における競争を実質的に制限することにより不当に対価を引き上げることとなる場合は、この限りでない。

一 小規模の事業者又は消費者の相互扶助を目的とすること。

二 任意に設立され、かつ、組合員が任意に加入し、又は脱退することができること。

三 各組合員が平等の議決権を有すること。

四 組合員に対して利益分配を行う場合には、その限度が法令又は定款に定められていること。

 独占禁止法とは、私的独占や不当な取引制限(カルテル、入札談合等)不公正な取引方法を規制する法律です。特にカルテルというのは、業界団体の構成員が互いに連絡を取って本来は各事業者が単独で決めるべき販売価格や生産数量等を取り決める行為のことを指しています。もっと簡単にいえば、商品の販売価格などを事業者同士で相談して固定したりするのは自由競争や消費者の不利益になる行為なのでやってはいけませんよという法律です。

 しかし、事業協同組合はこの法律の適用が除外されているので、事業者は相談して価格を決めてよいことになります。

 事業協組合という法人は4人以上の事業者で設立するもので、その運営も相談の中で決めます。つまり、組合員の商品を組合が仕入れ(買取り)組合が販売(共同販売)する場合、その商品の値段については組合員が相談して決めても何の問題もないということです。

 販売の反対である受注も同様です。組合が受注する場合は、その受注価格は組合の役員や組合員で相談して決めても問題ありません。無益な価格競争をして受注するより、組合という受け皿を作り、適正な価格で受けて組合員に分配する方が有益となります。

 注意すべきは、あくまで、組合が販売する商品の価格や受注価格を相談するということで、組合員各自が一般消費者等に販売する商品の値段や受注の値段を決めるものではないということです。そのような疑わしき行為があった場合はすぐに公正取引委員会から連絡がきます。

 自由競争を阻害しないルールを遵守しながらであれば、事業協同組合は独占禁止法の適用除外となります。

 全国には無益な価格競争を脱し、適正な価格での商取引の実現と地域活性化の実現を目指して事業協同組合を設立し共同販売事業を展開している事業者が数多くあります。

【官公需適格組合】

行政からの受注に優位?

 実は、日本には「官公需についての中小企業者の受注確保に関する法律」という法があり、国等は物件の買い入れ等の際には中小企業者の受注の機会を確保するためにその措置を講じその発展に資するというありがたいルールがあります。

 また、事業協同組合にはいくつかの条件を満たすことで中小企業庁(各地方経済産業局)が官公需適格組合であると証明する制度あります。これにより地域によっては入札等で特例を受けたりもできます。

 法律があることを盾に「中小企業に仕事を出せ!」は時代遅れで乱暴です。重要なことは相手(行政)も納得(議員から問われた時に納得させられる理由)して発注できる環境を整えることなのです。そんなとき「官公需適格組合」という制度は非常に有効な武器になるのです。

 全国には約850の官公需適格組合があります。是非参考にしてください。

【要望・陳情】

 数は力なり!

 事業協同組合は地域の業界団体という認識が強い傾向があります。近年は異業種の組合も多々あるのですが、それでも1組合は4人以上の事業者から設立しており、大きな組合の場合、組合員が300人以上だったりもします。1組合員の平均従業員数が5人としても多くの家族が地域経済を支えていることになります。

国会議員、県会議員、市町村議員の立場になってみも、同じ一法人の声を聴いた場合、株式会社と事業協同組合では、後者の方が業界の声を聴いているように見えます。

 そのため、行政対する要望は陳情は1社で声をあげるより、組合で動いたほうが効果的になります。しかも組合が連盟となるとさらに効果はあがります。

【まとめ】

 近年においては共同購買や共同販売を経済事業の主軸としている事業協同組合は減少傾向にあります。(※ただし外国人技能実習生受入に伴う事業協同組合は急増しています)その理由は共同事業にメリットがないためです。

 どんなに組合員の共同購買の商品をとりまとめても、そこに組合手数料を計上すると、組合員が支払う金額は現状と変わらないとすれば組合を通して買う必要はないからです。

 しかし、組合の利用価値は昔のような大量購買、大量販売だけではありません。少子高齢化、人手不足が明確な日本にとって、事業協同組合は中小企業が生き残るために必要な手段を提供するツールになることも多いです。

 是非、事業協同組合を活用してみてください。

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