こんにちは。
今回は、事業協同組合の定款の作り方についてご紹介します。定款とはザックリ言うと、組合のルールを記載したものです。
定款は、中小企業等協同組合法(以下、中協法)に準じて作成しなければいけません。また、組合運営の拠り所であり、問題が発生したら「定款はどうなっている?」と確認し、その内容に従って物事を判断・展開していく必要があります。
中協法で定められた定款に記載する事項以外にも、組合が円滑に運営されるために必要な事項等も考慮すると、概ね60条程度の条文が定款に記載されます。
60条もある定款となると、会社等の組織を立ち上げ経験のある人は、その内容をイメージできかもしれませんが、はじめて組織を立ち上げる場合は、どのように記載していいのか分からないと思います。
でも、大丈夫です。全く分からなくても全然問題ありません。
基本的に定款には、一般的な様式やひな型があり、それを参考に自分の組合用に修正して作っていきます。
つまり、条文等をゼロからつくる必要はないということです。参考として提示されている定款内容に、組合の概要をはめ込むだけで8割は完成します。残りは発起人で相談し決定した事を記入するだけです。
定款の中には不要では?と思う条文もありますが、基本的にあって損はありません。揉め事はルールがない事を起因することが非常に多いからです。
まずは、事業協同組合の定款の参考をダウンロードして下さい。
事業協同組合定款(参考ひな型)
こんな方におすすめ
- 協同組合を設立しようとしている人
- 協同組合の定款を作ろうとしている人
- 定款に記載する条文や文面に悩んでいる人
- 自作した定款の不備を確認したい人
Contents
【協同組合の定款の解説】
それでは、下記の解説を読みながら、ダウンロードした定款を原型として自分の組合の定款を作成していきましょう。
基本的に下記の条文に該当する箇所に加筆または不要な事業等を削除するだけで完成します。作業はそれほど難しくないのですが、処置する箇所は多いかもしれませんので粛々とすすめましょう。
名 称
第2条 本組合は、○○協同組合と称する。
組合の名称は、〇〇協同組合又は協同組合〇〇と記載します。
地 区
第3条 本組合の地区は、〇〇県〇〇市、〇〇市及び〇〇市の区域とする。
地区は組合員の事業場がある市町村名をすべて記載します。
事務所の所在地
第4条 本組合は、事務所を○○市(町村)に置く。
登記する組合事務所がある市町村名を記載します。
事 業
第7条 本組合は、第1条の目的を達成するため、次の事業を行う。
(1)組合員の取り扱う○○品 (原材料を含む。 以下同じ。)の共同生産
(2)組合員の取り扱う○○品の共同加工
(3)組合員の取り扱う○○品の共同販売
(4)組合員の取り扱う○○品の共同購買
(5)組合員の取り扱う○○品の共同保管
(6)組合員の取り扱う○○品の共同運送
(7)組合員の取り扱う○○品の共同検査
(8)組合員の取り扱う○○品の共同受注
(9)組合員の取り扱う○○品の共同宣伝
(10)組合員の取り扱う○○品の市場開拓
(11)組合員の事業に関する調査・研究
(12)組合員の事業に関する○○の研究開発
(13)組合員の新たな事業分野への進出の円滑化を図るための新商品若しくは新技術の研究開発又は需要の開拓
(14)組合員のためにする共同労務管理
(15)組合員に対する事業資金の貸付け(手形の割引を含む。)及び組合員のためにするその借入れ
(16)商工組合中央金庫、日本政策金融公庫、銀行、信用金庫、信用協同組合に対する組合員の債務の保証又はこれらの金融機関の委任をうけてする組合員に対するその債権の取立て
(17)組合員の○○事業に係る○○に関する債務の保証
(18)組合員の経済的地位の改善のためにする団体協約の締結
(19)組合員の事業に関する経営及び技術の改善向上又は組合事業に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供
(20)組合員の福利厚生に関する事業
(21)組合員の寄託物についての倉荷証券の発行
(22)組合員の取り扱う○○品についての前払式支払手段(商品券)の発行
(23)組合員ためにする外国人技能実習生共同受入事業
(24)外国人技能実習生受入れに係る職業紹介事業
(25)組合員のためにする特定技能外国人支援事業
(26)特定技能外国人に係る職業紹介事業
(27)前各号の事業に附帯する事業
2 前項第17号に掲げる債務保証事業の内容及び実施に関する事項は、規約で定める。
3 第1項第20号の規定により慶弔見舞金を給付する場合の給付金額は○○万円を超えてはならないものとする。
上記事業から組合が実施するもののみを抜粋して記載ます。( )内の号番号は抜粋後に昇順に整理してください。 ただし、2項、3項については、それぞれ対応した事業に関する項ですので、その事業を残した場合は一緒に残して下さい。また3項における慶弔見舞金の額は法律上10万円を超えいないように設定することとなっております。
組合員の資格
第8条 本組合の組合員たる資格を有する者は、次の各号の要件を備える小規模の事業者とする。
(1)〇〇業又は〇〇事を行う事業者であること
(2)組合の地区内に事業場を有すること
2 前項の規定にかかわらず、次の各号の一に掲げる者は、組合員になることができない。
(1)暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第2条第2号に規定する暴力団(以下「暴力団」という。)、暴力団の構成員(以下「暴力団員」という。)、暴力団員で なくなった時から5年を経過しない者、暴力団準構成員、暴力団関係企業、その他これら に準ずる者(以下「暴力団員等」という。)
(2)暴力団員等が実質的に運営を支配又は運営に関与していると認められる者
(3)暴力団員等を不当に利用していると認められる者
(4)暴力団員等に対して資金等を提供し、又は便宜を供与するなどの関与をしていると認められる者
(5)暴力団員等と社会的に非難されるべき関係を有していると認められる者
組合の資格については、日本標準産業分類の小区分程度の業種名を記載することが一般的です。日本標準産業分類のサイト(総務省:日本標準産業分類)を確認して下さい。
組合員名簿の作成、備置き及び閲覧等
第18条 本組合は、組合員名簿を作成し、各組合員について次に掲げる事項を記載するものとする。
(1)氏名又は名称(法人組合員にあっては、名称及びその代表者名並びに資本金の額又は出資の総額及び常時使用する従業員の数)及び住所又は居所
(2)加入の年月日
(3)出資口数及び金額並びにその払込みの年月日
2 本組合は、組合員名簿を主たる事務所に備え置くものとする。
3 組合員及び本組合の債権者は、本組合に対して、その業務取扱時間内は、いつでも、組合員名簿の閲覧又は謄写の請求をすることができる。この場合においては、本組合は、正当な理由がないのにこれを拒むことができない。
4 組合員は、次の各号の一に該当するときは、1週間以内に本組合に届け出なければならない。
(1)氏名又は名称(法人組合員にあっては、名称及びその代表者名)及び事業を行う場所を変更したとき
(2)事業の全部又は一部を休止し、若しくは廃止したとき
(3)資本金の額又は出資の総額が○○円を超え、かつ、常時使用する従業員の数が○○人を超えたとき
この条文では、第4項(3)の部分のみ注意してください。 ここは組合員が中小企業の範囲を超えた場合、つまり、大規模事業者の枠になって場合、その内容を組合に報告する旨を明記しております。そして、組合はその報告を受け、30日以内に公正取引委員会に報告する義務が生じます。 よって確認していただきたいのが中小企業基本法におけるの中企業の範囲です。下記を参照下さい。
業種 | 中小企業の定義 |
製造業その他 | 資本金の額又は出資の総額が3億円以下又は
常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人 |
卸売業 | 資本金の額又は出資の総額が1億円以下又は
常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人 |
小売業 | 資本金の額又は出資の総額が5千万円以下又は
常時使用する従業員の数が50人以下の会社及び個人 |
サービス業 | 資本金の額又は出資の総額が5千万円以下又は
常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人 |
そうすると、定款への記載方法は2とおりあります。
組合員が同業種のみ場合(例:製造業)
(3)資本金の額又は出資の総額が3億円を超え、かつ、常時使用する従業員の数が300人を超えたとき
組合員が複数業種の場合(例:建設業、運輸業、小売業、サービス業)
(3)資本金の額又は出資の総額が3億円(主たる事業が小売業及びサービス業にあっては5千万円)を超え、かつ、常時使用する従業員の数が300人(主たる事業が小売業にあっては50人、サービス業にあっては100人)を超えたとき
以上のような書き方になります。少し面倒くさいが参考にして下さい。
それと、この中小企業の範囲は中小企業基本法で決めている範囲であって、他の法律はでこの範囲ではない場合もありますので注意してください。
出資1口の金額
第21条 出資1口の金額は、○○円とする。
出資1口の金額について法律上の上限や下限はありません。自由に設定していただいてOKです。ただし、設立の際には1組合員が出資総口数の1/4を超える出資できません。そして、100口出資している組合員も、1口のみ出資している組合員も総会においては平等に1票の議決しかありません。それも含めて金額を設定しましょう。一般的には1口:10,000円~100,000円の金額で設定している組合が多いです。
延滞金
第23条 本組合は、組合員が使用料、手数料、経費、過怠金その他本組合に対する債務を履行しないときは、履行の期限の到来した日の翌日から履行の日まで年利○○%の割合で延滞金を徴収することができる。
この年利については自由に設定してよいですが、消費者契約法(9条2号)の遅延損害金を参考に14.6%としているところが多いようです。
持 分
第24条 組合員の持分は、本組合の正味資産につき、その出資口数に応じて算定する。
2 持分の算定にあたっては、○○円未満の端数は切り捨てるものとする。
ここは組合員が脱退したり、組合を解散する際に、組合員に返金する持分の計算の端数をどのように処理するのかを記載しています。一般的には100円~10円未満の切り捨てのようです。
【まとめ】
いかがでしょうか。
組合の設立趣意書を事前に発起人で決めておくと、この定款の作成は以外と簡単に進むと感じたのではないでしょうか。しかしながら、まだ半分程度しか完成しておりません。
続きはその2で解説します。
もう少しで定款も完成します。頑張りましょう。