事業協組合 組合Q&A

組合員からの脱退の申し出の受理について解説します

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こんにちは。

今回は、組合員からの脱退の申し出があった場合の処理を解説します。

よくある話が、組合の事業年度が4月1日から3月31日までとなっているのですが、1月や2月に突然、組合員から「今年度をもって組合を脱退したいのですが・・・」という話がでてきてしまい、定款上では脱退は90日前予告というルールになっていることから、どのような対処がよいのかという疑問についての解説と見解です。

ちなみに、単なる中小企業組合士の解説と見解ですので、絶対的に正しいものではないことはご了承ください。「そうゆう考えもあるのか」程度でとらえていただき、難しい事案については弁護士などの専門家への相談することをお勧めいたします。

こんな方におすすめ

  • 組合員の脱退のタイミングを知りたい人
  • 組合の脱退に事前報告が必要な理由を知りたい人
  • 60日や30日前の予告で脱退を認めたいと考えている組合

Contents

法律と定款の確認

 まずは、自分の組合の定款を確認しましょう。

 基本的に組合の定款は中小企業等協同組合法(以下、中協法)に準拠して作成され、そして行政庁から認可を受けております。そのため、組合の定款の脱退の条文を確認してみましょう。

  下記は中協法と定款のひな型に記載れている条文です。

中小企業等協同組合法

(自由脱退)

第十八条 組合員は、九十日前までに予告し、事業年度の終において脱退することができる。 2 前項の予告期間は、定款で延長することができる。ただし、その期間は、一年を超えてはならない。

組合定款(ひな型)

(自由脱退)

第12条 組合員は、あらかじめ本組合に通知したうえで、事業年度の終わりにおいて脱退することができる。 2 前項の通知は、事業年度の末日の90日前までに、その旨を記載した書面でしなければならない。

おそらくですが、組合の定款の脱退予告の日数は「90日前」となっていると思います。もしかしたら、もっと長く100日前や120日前となっている組合もあるかもしれません。いずれにしても、中協法では90日を下回る脱退予告を認めておりません。

法律準拠の対応

 すでに、明確な回答はでておりますが、年度末を3月末日として活動している組合の場合、最低でも12月末までには脱退の予告(脱会届)を組合に提出してもらわないと、その年度末には脱退できないという結論になります。

 つまり、1月~3月に脱退の予告をされても、その組合員が正式に組合から脱退できるのは翌年度末になるということです。

 そして、この法や定款を盾ではなく攻撃的な武器として使用するなら、1月~3月に脱退予告をした組合員は厳密には翌年度末で脱退となるので、翌年度中は組合員扱いとなります。心は組合に無く事業利用もないかもしれませんが、賦課金等の請求は組合員ですので問題なくできます。さらに、その賦課金の請求を拒んだ場合、賦課金額については、払戻す出資金から差し引くことも中協法で認められています。

 一見、ドロドロの別れ話のような展開でありますが、法や定款はすべての組合員に平等にあることを前提に判断しないと、いつか必ず、「あの組合員はよくて、なんでこの組合員はだめなんだ?」と内部分裂が起こります。

脱退予告が90日前とする理由

 この90日前までの予告に制限をかけるのには理由があります。

 事業協同組合は企業が出資して設立します。その資金は組合を運営していくと様々な資産に変わっていきます。場合によっては現金や預金から不動産や建物、または在庫品となっている場合もあります。

 そして、組合員が脱退するとなると、組合は出資金を返す義務が生じます。この出資金の払戻すタイミングは、通常総会で決算が承認されからの払い戻しです。

 つまり、現金や預金が潤沢にある組合であれば、何の問題もなく出資金を払戻すことができるのですが、事業協同組合の本質は組合員を対象とした事業を展開し、組合自体が利益を追求する目的で事業を展開していないことから、突発的な資金の流出には弱い側面があります。そのため、払戻す出資金の金額が大きいと、組合は資金繰りが悪化してしまう可能性が高くなり、場合によっては金融機関からの借り入れや、組合員に賦課金の増額をお願いする必要が出てきます。資金の借り入れや、経費の賦課の増額は、役員会で簡単に進めるものではなく、総会(臨時総会)の承認が必要となりますので、これら資金不足の対策時間が十分に必要となることから、最低90日前までの脱退予告としているのです。

脱退の種類

組合員の脱退には2種類あります。

これまで説明しているのは、自由脱退を前提とした説明です。この自由脱退の他に法定脱退というのがあります。詳細は次のとおりです。

自由脱退

これは、組合員の意思によって脱退することです。ですので、90日前までの告知等についてはこの自由脱退を前提したルールです。基本的に加入する際は、組合の理事会で承認される必要があるのですが、脱退については組合の承認は不要です。

法廷脱退

これは、組合員が資格喪失により強制的に脱退することを意味します。倒産や廃業などのイメージです。そうすと組合に脱退の予告をできないまま、脱退することになります。ですので事業年度末が3月末日だとした場合、2月で倒産となればその日付で一応脱退となり、次年度の通常総会の承認をもって出資金を戻します。

90日より短い脱退予告への対応

 中協法にる脱退の90日前の予告の義務付けとその理由を解説しましたが、やはり苦楽を共にした組合員からの急な脱退予告はすぐに受理してあげたいという仲間心もわかります。もしかすると、その組合員自体が経営の窮境状態となり、組合の出資金が戻ってくることで何とか持ちこたえるかもしれないという状況かもしれません。そのような時に「いえ、脱退予告は組合のルールですから」と無慈悲に突っぱねること自体、組合の本質に反しているような気もします。

 ここからは、完全に個人的な見解と憶測になります。参考にして訴えられても一切責任を負いませんのでご容赦願います。

 勝手な想像ではありますが、組合の中には、例えば30日前に脱退予告をもらっても受理しているところはあると思います。そして手続き上、90日以上前の日付で脱退願いの届出をもらい当該年度末で脱退させるように進めているのだと思います。

 組合は定款を違反し法律も違反していますが、もし、これを訴えてくる可能性があるとすれば、組合員ぐらいです。ですので、組合員が納得してしまえばゴリゴリと年度内に脱退させ、出資金も返金させることは可能です。しかし、何かの拍子で組合員から組合が訴えられたとき、この事実を証明されると、組合、事務局、役員等執行部の責任力と管理能力の信頼は地に落ち、圧倒的不利な状況となることは必至です。

まとめ

 多くの組合は4月1日~3月31日が事業年度だと思います。そのため1月~3月はこのような事例が沢山でてくると思います。

 専門家に聞いても無責任なことは仕事上言えないので、正しい回答しか教えてくれないと思います。正直、その回答は定款と中協法をみれば、誰でも導きだせるものなので、聞きたいことはその機械的なものではなく、グレーでもいいので他の方法はないのかということだと勝手に思い記事にしてみました。

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